男の更年期の話。(プロたん)

   

『男の更年期』

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)・八味地黄丸(はちみじおうがん)・六味丸について


「男の更年期」の概念について・・・。

「男の更年期」ってあると思いますか?無いようで実際に「ある」と私は思います。
女性の場合には、「閉経期」という概ねのラインはあるものの、男性にはご承知のようにありません。
甚だ私見になりますが、個人差はあるものの女性よりも少し遅く、およそ55歳~60歳前後から「はじまる」のではないかと思います。

実は私も63歳還暦超えですので、もろに直面しているわけで、周囲からもよく言われます・・・『やたらガミガミうるさくなった』と。(笑)
会社勤めの方はそろそろ「引退?」のお声がかかっている頃とでも言いましょうか、言い方を換えれば輝かしい第二の人生へのスタート地点にさしかかっている時とでも申しましょうか・・・。
男性ホルモンの分泌が衰えはじめるのもちょうどこの時期で、夜中のトイレや、性欲の減少、倦怠感、白髪とか・・・腰痛や神経痛など。急に怒りっぽくなったり、塞ぎ込んだり。心当たりがあるのでは。

特に、勃起力の急速な減退は当人が自覚するものの、男としてそうむやみに公言できるものでもなく、実際にお悩みになられて当薬局を訪れる男性客も多いと思います。
なかなか生薬強壮ドリンク(○○ケル)とかを飲んで一時的に効果?はあったとしても長期的な問題解決には至りませんね。

むしろこれら栄養ドリンクの適応として、かぜ気味や急激な肉体疲労の時に功を奏するものであると考えております。

さて男子更年期障害をうたった一般市販薬で「メチルテストステロン」含有の製剤はいくつか市場に出回っております。
つまり男性ホルモンが加齢とともに減少するために、それを補充するための製剤と理解はしていますが、当店では取り扱っておりません。
その理由を言いますと、当店では後述する漢方療法を主体としているために取り扱わないと言ってよろしいでしょう。

病院でも「男性のホルモン補充療法」は実際に存在します。具体的な疾病を有し、医師が治療するに必要であると認めれば、患者の同意を得て実施することがあります。

疾病に対する治療法は多岐に渡っておりますので一概には申せませんが、保険診療の範疇では何等かの病変を前提といたします。

従って内分泌系疾患等を除き、単なる若返り(アンチエイジング療法)を目的としての男性へのホルモン剤投与は専門医師によるフリーテストステロン値、PSA値の測定など、いくつかのハードルが存在するようです。(もちろん実費と伺いました。私は行ったことはありません。汗)

バイアグラの投薬についてもしかりで、患者さんのED(勃起不全)の医師診察による確認と、心因的なEDなのか、器質的なものに由来するEDなのかを診断し、又は精査等によって必要ありと裏づけがとれなければ、そうむやみに処方されるものではないと考えます。

理由を言いますと、これら製剤は、それなりの副作用・相互作用を有している薬物だけに慎重投薬ということでしょう。

この件に関しては、反論される方も相当数いらっしゃると思いますので、このホルモン剤使用やバイアグラの話はこの辺にしておきましょう。
とにかく、当店ではこれら薬剤は全く取り扱っておりません。
『腎虚』と『いわゆる男子更年期障害』の相関関係

漢方でいう「腎」とは現代医学の「腎臓」の概念とは違います。
漢方医学では六臓のうち腎は五行思想で言う水をつかさどる機能を指します。六腑で言えば膀胱。
つまり腎臓、副腎、泌尿器、生殖器などの働きを総称して『腎(じん)』といたします。

よく東洋医学では「臍(へそ)」の位置を引き合いに出しますが、腎のイメージとしてはこの臍の周辺及び下の働きと考えてよろしいでしょう。
例えばよく勇気や精気を出すツボで臍下丹田(せいかたんでん)と聞きますが、へそと恥骨の間の腹中、臍下三寸(約9.1cm)にある体のつぼ。これも「腎」に関連した箇所と言えるでしょう。

この「腎」には人間の精気のうち生殖能力に関わるものを貯めるとされています。

「腎」が「虚」する、つまりこの腎の機能が衰えた状態を「腎虚(じんきょ)」と呼んでおります。

これは男女共通で、尿の出が悪い、頻尿、尿漏れ、目がかすむ等、中年期以降に起こりがちなこれらの症状は、腎虚によると考えられています。

特に男性の場合は性欲・精力の減退、身体のだるさ、疲れやすい、意欲の低下等が顕著であり、漢方医学でいう「腎」の機能低下そのものが、「男の更年期」と私は考えます。
私見ですが、原因不明の男性の断続的な「耳鳴り」も器質的な病変が無い限り、この「腎虚」から由来するのではないかと思います。

過去の例として、某中年過ぎの男性患者さんのケースです。
突然の「耳鳴り」に、当薬局に来るまで病院を数箇所「はしご」受診されてきたそうです。あらゆる検査を受けても所見がはっきりせず、長期投薬も繰り返し(新薬、漢方製剤も)少しも改善されないとの訴えでした。
人に言ってもわかってくれないと落ち込んでおり、少々うつ傾向も認められました。

ためしに以下後述する「腎虚」改善の漢方、「八味丸(八味地黄丸)」を処方したところ、ごく短期で頑固な耳鳴りがピタリ止まったことがあります。
八味丸(八味地黄丸又は、八味腎気丸とも言われます。)は、腎虚の証を改善する素晴らしい漢方処方と言われております。

『精(せい)』という言葉の意味するものは?

東洋医学で言う「精(せい)」とは何でしょう?巷では、男性を対象とした「精力」に受け取られるようですが、もっと広義の意味での「精(せい)」、生命の源と言ってもよろしいでしょう。

生きるためのエネルギー、決して目には見えぬものですが、はつらつとした男性像、みなぎるパワー、全身からほとばしるようなオーラみたいなもので、中年過ぎの男性諸君があこがれる理想像かも知れません。
バリバリ仕事をこなし、家庭での大黒柱としてのリーダーシップ、妻や娘からは決して「サイテー!」とか言わせない、優しくて元気で逞しいパパ。
実行できていますか?多少の演出はあったとしても、何とかできていれば良しとすべきでしょう。でもいつかは限界があります。
その引き金になるのが「男の更年期」かも知れません。

古代中国では生殖力・生命力の源の「気(き)」を「精(せい)」として考えました。
この「精」は五臓六腑の「腎(じん)」に蓄えられ、人生すべての営みを支えるものといたしました。
しかし、次第に老化が進むと、「精」が減少し、蓄えが枯渇し「腎虚」の状態になります。
完全枯渇は「死」を意味いたします。
腎虚の主症状は、下腹部の異常感、足腰の脱力感、腰痛、四肢のほてりや冷え、膀胱括約筋の緩み、排尿障害、口のかわき、かすみ目、白髪など、多くの「老化現象」と言われる症状が出現いたします。

これら、症状を今度は西洋医学的疾病で置き換えると、腎障害・尿路障害(前立腺肥大症を含む)・精力減退・インポテンツ・夜尿症・坐骨神経痛・遷延性うつ、老人性白内障、老人性掻痒症(やたらかゆい)、難聴・耳鳴りなど、病名をあげているとキリがありません。

八味地黄丸(はちみじおうがん)』には実はホルモン様作用がある?!

八味地黄丸のことを略して八味丸と言います。

また、六味地黄丸も同様に六味丸と言います。


さて、前述したようにこのような腎虚の症状を改善する漢方処方の代表として「八味地黄丸」をご紹介いたしました。
この処方は、地黄(じおう)を主として、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)、桂枝(けいし)、附子(ぶし)を配合した構成となっています。

地黄はゴマノハグサ科アカヤジオウの根で、血管拡張作用や、血液凝固の抑制作用により血行を改善いたします。また血糖降下作用や利尿作用があることが確認されています。

山薬(さんやく)

ヤマノイモ科の山薬(さんやく)ですが、根に粘液質のムチンを含みます。その他サポニン、アラントイン、アルギニン、コリンなどを含み、この根の薬効は根に滋養強壮効果があることが知られております。
薬理作用は極めて複雑で、研究によりホルモン様作用を有することも確認できました。
たとえば、抽出されたジオスゲンは、女性用ホルモン剤ピルにも利用されているようです。

このように「八味地黄丸」の適応症をみても、ホルモン系にも働きかける穏やかな生薬が配合されていることがわかります。

『八味地黄丸』をさらに増強した処方『牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)』


副題:70歳代を決して「初老」とは言わせない・・・・・。

さて、この八味地黄丸から派生する小生のとっておきの処方を二つご紹介いたしましょう。

まず最初が、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

懐かしい過去のエピソードをお話ししましょう。。

よく、「うしぐるまちんきがん」をくださいな・・・と、70歳のお父さんがやってきました(笑)・・・・・。なんてったって、ハツラツとして、姿勢がよろしい。
負けそうです。まさに中年紳士。背筋がぴっと伸びて、元気そのもの。『最近のご店主、覇気(はき)がないねぇ~、少しサービスしなさい』と、あおられてしまいます。

このお父さんは本来都心の方なのですが、諸事情があって、当地に近い高級有料ホーム(マンション)へ単身入居された方です。
入居された直後に、当薬局へご相談に来たのですが、都心で通っていた漢方薬局の処方をそのまま指定してきました。「うしぐるまちんきがん、有るかね」と。『??????はあ、これですね。牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)ですね・・。』汗

「なかなか、この漢方はいいね。」
『そうでしょう、人気の処方ですね。お見かけしたところ、お元気そうですが、糖尿ですか?腰痛には見えませんが・・・・。』
『まさか。(笑)』
『?????ひょっとして、かすみ目とか??汗』
『違う、違う・・・・朝、ちゃんと立つんじゃよ。(笑)』
『はぁ・・・!?・・・・・どっと汗』
『なかなか良いね。いや変な意味じゃなくてね、ワシの健康の証(あかし)とでも言おうか。朝の確認じゃよ。体調も至極良い(笑)』
・・・・なるほど、教えられました。道理です。

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は、八味地黄丸にヒユ科ヒナタイノコズチの根、牛膝(ごしつ)(「血」(けつ)の改善作用、強精作用)とオオバコの種子である車前子(しゃぜんし)(消炎・利水作用・・・泌尿器系で用いられる)などこれら二つの生薬を加えることにより、より効果を強化した処方です。
従って強精・消炎・利尿作用の増強として、当薬局では用いることが多いのです。特に中年紳士らの人気処方ですね。

ほてりや熱感、むくみがある場合、『六味地黄丸(ろくみじおうがん)』
副題:過去プロたん愛用処方

現在、私自身が服用している漢方処方は『五苓散』という処方。概ね5年近くは服用を続けております。
幼少の頃から腎臓が悪く、何度かネフローゼを体験する苦い思い出があります。

当時の施設と言う環境下にずっとおかれておりましたので、集団風邪などに見舞われ、同期生で不幸にも亡くなった方もおります。
従って、小学校も家庭の諸事情も重なり、運動会、プール等ほとんど行事に参加した記憶がなく物心つく頃には立派な「虚弱少年」になっておりました。

運動に目覚めたのは16を過ぎた頃です。武道に執着し、近隣の道場に足げく通い、その甲斐あってかかなり体は鍛えたと思います。
50歳になるまでは、かなりタフに仕事をしておりましたが、やはり『更年期』に入ってからはいろいろと出てまいりました。
まず血圧です。腎臓から由来する浮腫とくれば次に心臓。そして呼吸器へと。
独特の足ほてりと、手の熱感、さらに腎に由来するむくみとなれば、六味丸(六味地黄丸)。
これは煎じ薬ではなくて、粒状になった丸剤です。

ずいぶんとこの処方にはお世話になりました。
ちょうど5年間の投薬でしたが、血圧だけは、現状ドクターから「優等生」のお墨付き?を頂いております。
まさに「男の更年期」を乗り切る「ソフト」な漢方と言えるでしょう。

最近は、煎じ薬の『五苓散料』から原末剤の『五苓散』にスイッチし、その後は三和の腎臓仙へさらにスイッチ。現在もなお続けております。

上記の症状は悪化もせずに安定している模様です。

地黄製剤の注意点

地黄という生薬は素晴らしい生薬で、作用時間も長く、じっくりと効かせるには最高の生薬であると私は思います。
生薬の作用を強い・弱いで区分するのならば、地黄はどちらかというと「強い」方に入ると思います。
興味津々、最後までお読み頂いたお客様には話の腰を折るようで申し訳ないのですが、『胃の弱い』方にはあまり向いていません。
激しい症状はでませんが、胃弱な方が用法通り空腹時に服用すると、独特の『もたれ感』が出現することがよくあります。
本場中国の「腎気丸」(八味丸)と比較しますと、和製の「八味丸」は、使用している原材料を日本人向けに調整(少なく)しておりますが、それでも服用を開始してから、「もたれる」というお客様がいると思います。
私の場合も実はそうでした。
どうしても六味丸だけは服用を続けたく、その丸剤の服用方法を空腹時から「食後」に変更したいきさつがあります。
食後に変更することで、当然効果は薄くなりますが、長期的に考慮すれば、これも一つの方法論かとも思っております。

(HTML編集プロたん漢方外来 )

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