カワラヨモギと「茵ちん蒿」と「綿茵ちん」

   

カワラヨモギと「茵ちん蒿」と「綿茵ちん」

カワラヨモギってご存知でしょうか?
海辺や川岸を歩いているとよく見かける薬草。日本では本州を中心としてよく育ち、一見して雑草の類かと思いきや、とんでもない貴重な生薬なんですね。
このキク科のカワラヨモギの蕾または頭花を乾燥したものを茵ちん蒿(いんちんこう)と、妙な生薬名ですが呼びます。
漢方の世界では消炎、利尿、解熱、利胆などの効果があり、黄疸、尿量減少、湿疹などの多方面で使用されています。
日本では基本的には姿が小ぶりの果穂をよく用いているが、実は茎葉である綿茵ちん(めんいんちん)を用いるのが正式のようだ。

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綿茵ちんの思い出

薬学生時代の頃、冬休みに風邪をひいて寝込んでいる上級生のピンチヒッターとして指名され、都内の漢方専門薬局で3日ほどバイトをしたことがある。
話を聞くに、恐ろしいほどの安い時給で信じられなかったが、これも先輩命令と諦めて、いそいそと例の薬局へ向かった。
とても口やかましいお爺さん店主一人の薬局で、挨拶もそこそこにすぐ仕事に入った。

かなり忙しい漢方薬局で、朝夕の清掃、ご来店客へのお茶出し、入荷商品の検品、品出し、生薬棚への先入れ先出し、管理表への記載とか、仕事量が半端ではない。
挙句に初日から製剤(煎じ薬)するにあたっての生薬素材のピックアップがこれまた難儀で、さすがにうろたえた。。
メモ紙に達筆の走り書きでお爺さん先生は私に渡し、早く持って来いと支持する。

無数の引き出し付き、生薬棚は正面の壁面だけではなく、側面にもべったりと並んでいて、これがまた50音順ではなく無造作に素材を貯蔵しているわけだから、ちょっとした「神経衰弱ゲーム」。
必死に集めてトレーの中に入れて駆け足で戻る。先生は必ず「遅いぞ、もっと早くめっけて来いや~。。」と怒鳴りまくり。

午前中の3時間があっという間に過ぎて、汗まみれのくたくた。もちろん昼休みなどあるわけがない。患者さん優先だから。お茶お茶。。とせかされ慌てて「いらっしゃいませ。」とお顔でお茶出しの話。
今でこそ一番記憶に残るのが「綿茵ちん」の引き出しだ。学校では「茵ちん蒿」の形状は「ツブツブした形状の果穂」で学んでいたが、「綿茵ちん」の引き出しには「くすんだ色合い」になった細枝の気味悪い生薬しか入っていない。
「こらぁ~」と先生の声が聞こえる。。勇を鼓して引き出しごと引き抜いて、先生のところへ猛ダッシュで駆け付けた。

「よっしゃ~」と機嫌よく頷いて、「こんなにいらんから、元に戻して・・」と目分量でその「綿茵ちん」をガサッと舟(生薬調剤用皿のこと)ですくう。
なんとなく客がいない空白の時間帯に、「綿茵ちん」と「茵ちん蒿」との違いについて質問したところ、「おお」と驚かれて、それから仔細ご教授頂いた。
へとへとの2日間であったが最後の日、3日目は先生には申訳けないが客は少なく、私にとってはとても楽な1日であった。

結局その日は先生の差し入れで、海老天丼をご馳走になった。それがめっぽう美味で、今でも忘れない。
漢方薬局は自分が好きでなければ続けられない。漢方を積極的に実生活に生かしなさい。と、力説されていたことを記憶している。
とても仕事には厳しい先生であるが、人情味ある方であると感じたものだ。

大学の学生生活に戻ってからも、先生から何度かお誘いの電話を頂戴して驚いたものだ。
しかし、私自身の生活費もままならない状況(背に腹は変えられない。)ゆえ、既に新しい下宿先でアルバイトを開始していたことを先生に正直にお話ししたものだ。
そのようなわけで、残念だがお断りした次第だ。今考えるともったいないことをしたと後悔している。

このカワラヨモギをベースにした漢方処方をいくつかご紹介してみます。

特に下の茵ちん五苓散は、日々のご相談の中で、難治な蕁麻疹の患者さんで証が合えば私は必ず推挙する方剤です。

湿熱とは、湿邪と熱邪が合わさって起こった複雑な病症のことで、発熱、頭痛、からだが重くて痛む、お腹が張って食欲がない、小便が少なく黄赤色を呈することがある。
茵チン蒿湯(インチンコウ)とは比較的体力のある人で 便秘がちの人で上腹部より胸部にかけての膨満感、不快感があり、口や喉の渇き、便秘、尿量の減少、悪心や便秘、身体がかゆくなったり、又口内粘膜が炎症をおこし痛む状態に利用されます。この消化管や内臓器の炎症を漢方では裏熱といいます。漢時代の傷寒論および金匱要略という古典書で紹介されている処方です。
甘露飲(かんろいん)は9種の生薬が陰虚内熱を改善し口腔内トラブルを改善する漢方で、口臭の気になる方にも推奨。 いつもア...